蒲田東口エリアマネジメント:旧逆川道路デザイン検討業務、(一社)蒲田東口おいしい道計画 (東京都大田区/2010-)
大田区蒲田は、かつて「映画の街」と呼ばれ、戦後の高度経済成長期には臨海部の工業地帯や町工場で働く人々の繁華街として栄えた。いまでもJR・東急蒲田駅周辺には小さな飲食店や居酒屋、バーなどが集まり、昭和的な親しみと猥雑さを感じるまちである。羽田空港への玄関口でもあり、空港関係者や出張のために訪れるビジネスマン、海外からの観光客など様々な人々が集まる。蒲田駅の東口は、JR・東急蒲田駅と京急蒲田駅の乗り換え客の移動でビジネスホテル等の宿泊施設も多い。
2010年から、大田区と蒲田再開発推進委員会の依頼で、JR・東急蒲田駅東口から程近くにある全長約220m、幅員約12mの道路「旧逆川道路」整備に関わることになった。この道路は、もともと六郷用水の分水であった逆川を暗渠化したもので、戦前は蒲田松竹撮影所(その後は高砂香料の工場)の正面に位置し、その跡地再開発によって出来た複合施設アロマスクエアと呑川を結ぶ、短いながらも重要な通りであったが、整備前はビルの裏手という印象で、暗く人通りも少なかった。
この”さかさ川通り(整備後に名前を改称)”は、大田区の蒲田駅周辺地区グランドデザイン(2010年策定)で「蒲田の新たな回遊路整備のモデル」として位置付けられていたため、整備では普遍的かつ魅力的な道路デザインを目指して各種参加型のワークショップや検討会を重ねることとなった。
蒲田再開発推進委員会*の中に通りに面する地権者、大田区、商店街関係者やまちづくり専門家で構成するワーキンググループ(WG)を設置し、縮尺1/100の道路検討用の模型を使ってスタディを重ね、4つのデザイン案をまとめた。(写真右上)その4案の縮尺模型を現場に設置して、周辺住民や在勤者にヒアリングを行い、デザインに対する意見を集めるとともに、どの案が良いか人気投票を行った。その結果をもとにさらなる検討を行って一案にまとめてから、全体イメージを共有するために現場確認ワークショップを実施した。その後、ランドスケープやストリートファニチャーの専門家をWGに加え、植栽、ベンチ、車止め、舗装などの検討を進めた。いくつかの舗装材料とパターンを現場に設置することによって、細かな寸法や形のチェック等の景観シミュレーションを行い、基本設計を完成させた。
デザイン検討段階から完成後の道路の活用を想定しており、道路の工事中に検討メンバーを中心とした「一般社団法人蒲田東口おいしい道計画」を設立、2014年6月のオープニングイベント「おいしい1週間」を皮切りに、実証実験として年数回さかさ川通りを活用したマルシェイベントを開催している。また新たな展開として、さかさ川通りと交差する中央通りや隣接街区での再開発計画の相談、蒲田東口のまちづくり提案などをおこなっている。
→詳細は蒲田東口おいしい道計画のホームページをご覧ください。