しんかいばし児童遊園改修プロジェクト

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 東京23区では既存小公園の改修計画が進んでいるが、自治体財政の逼迫化で整備予算もあまりつかない状況である。しかし、新宿区は小公園の再整備をきっかけにした「都市コミュニティの再生」をめざしている。そこで新宿区からの研究委託として、地域コミュニティ再生に貢献できるような住民参加型の公園設計ワークショップを行いながら、しんかいばし児童遊園の改修デザインを実践した。
 この公園のすぐそばには児童館が近接しているため、設計プロセスのすべての段階で、児童館の協力をいただきながら、こどもたちの意見や提案を前提に進めた。日本では、公園の設計における住民参加とこども参加の事例が比較的多いが、プロセスの一部にこどものアイデアを取り入れている事例がほとんどで、プロセス全体にこどもの参加がある事例は極めて少ない。しんかいばし児童遊園においては、児童館の2年におよぶ協力が得られたおかげで、最初の遊び体験から最終的な運営段階まで、長期にわたってこどもの参加が得られた。このことは、利用しやすい公園の設計という視点を越えて、こども達の両親や祖父母をはじめ、地域全体を巻き込むことにつながり、コミュニティ形成に良い影響を与えた。さらに、こどもがまちづくりや社会を学ぶための教材として、地域の公園の設計が極めて有効であることを私達に教えてくれた。
 現在この公園は公園サポーターズという住民組織による運営が行われている。大人とこどもの公園サポーターズによって、公園の清掃や花植え、遊びの見守り、さらに定期的なイベントの開催が行われ、小規模な公園ではあるが、地域の豊かなコミュニティ形成の核になっている公園である。整備前は地域住民の調査で一番利用されていない公園であったが、整備後にはこどもたちの遊ぶ声が絶えない貴重な場所となっている。
 参考文献:「コミュニティの再生と公園緑地」公園緑地、Vol.71,No.5,2011年

▶プロジェクトデータ
 ・所在地:東京都新宿区北新宿3丁目30番
 ・設計年:2005年〜2006年
 ・委託者:新宿区
 ・プロジェクト内容:住民参加による整備プランの作成
 ・敷地面積:481.89㎡