こうちこどもファンド(高知県高知市/2012-)

–¼Ì–¢Ý’è-2 2012年にスタートした高知市の「こうちこどもファンド」は、”こどもたちによる、こどものためのまちづくりファンド”である。ファンドに応募するのがこどもであることはもちろんのこと、ファンドの審査も、小学生3人、中学生3人、高校生3人の9人のこども達が行う。(もちろん最終的な金額の決定に際しては、大人審査員の協力を仰ぐが、企画に関する審査の投票権を持つのはこどもだけである。)私(卯月)は、企画立案から関わり、現在はこのファンドの審査委員長を努めている。
 第一回開催となった2012年は、こども達の応募があるかどうか、また応募のこども達と審査のこども達が公開審査会の場で、きちんと議論ができるかどうかと、関係者は大きな不安をいだいていたが、その不安は全く不必要なものだった。小学生の団体から3つ、中学生の団体から2つ、高校生の団体から5つ、小学生と中学生が入った団体から1つ、小中高すべてが入った団体から2つ、合計13団体の応募があった。そして、公開審査での質疑応答も、審査員が同年齢ゆえ白熱したやりとりが行われ、最終的には10団体の助成が決定した。小学生の企画では、「こども夏祭りの企画運営」「消防小屋のシャッターに絵を描く」、中学生の企画では、「地域の史跡に標識を立て、オリエンテーリングを実施する」「生徒会の中にボランティアの会を結成して、地域の清掃や花植えの活動を行う」、高校生の企画では、「避難路の案内板設置と避難公園の清掃、市内の落書きを消す活動」等に助成され、活発な活動が行われた。第二回では計8団体が助成を受け活動し、現在、第三回の開催に向けて準備中である。
 高知市の「こうちこどもファンド」のめざすものは、大きく2つある。ひとつは”こどもが自ら生活する地域に関心や問題意識を持ち、自らが改善提案を考え、実行する”という、いわゆる「シチズンシップ」の育成である。もちろん大人の市民活動助成の目標も同様であるが、こどもの頃から市民社会を担う体験をする事は極めて重要である。もうひとつは”こども達が地域で活動する事によって、実は両親や祖父母はもちろん、地域の様々な世代の人たちの参加を促す事ができる”ということである。地域のまちづくり活動をする市民はいつも同じメンバー、という声をよく聞く。しかし、こどもが企画し運営するイベントを地域に呼びかけると、大人の参加は確実に増えると言われている。こどもには、「人と人をつなぐ力」がある。多世代が参加する地域コミュニティの形成には、この「こどもの力」は欠かせない。
 「こうちこどもファンド」は、高知市からの2000万円の出資の他に、地元市民や企業からの寄附を集めて進めることを目指しているが、当初難しいだろうと考えていた「こうちこどもファンド」への寄附も、初年度から少しずつ集まりつつあり、現在300万円を超える寄附が集まっている。高知市の大人のファンドはすでに10年の歴史があっても、なかなか寄付金が集まりにくい状況に対して、こどもファンドへの市民の関心は極めて高いことがわかる。このことから見ても、こどものまちづくり活動の必要性は多くの人が認めるものであり、今後まちづくりのアクターとしてこどもは大変重要である。