自由が丘駅前広場デザイン検討業務(東京都目黒区/2009)

–jiyugaokaall 自由が丘は、多くの雑貨店や各種のアンテナショップがあり、若い女性や海外からの観光客にも人気のあるまちである。ところが、駅前のロータリーはタクシーが二重三重に取り巻き、自由が丘のイメージにほど遠い混乱した景観であった。そこで40数年ぶりに、ようやく駅前広場の再整備が計画され、目黒区によって設計案が地元に提案された。しかし,駅前広場は鉄道やバス、タクシー事業者をはじめ、商店街、住民等利害関係者が多くなかなか意見がまとまらなかった。そのような状況の中で、地元のまちづくり会社であるジェイ・スピリットが駅前広場のデザイン調整の役割を担うことになり、「自由が丘のまち運営会議」議長である卯月がそのお手伝いをすることになった。
 限られた期間の中で多くの関係者の意見を調整することは極めて難しい。そのために、大きな図面や模型を常に中央に置いた円卓会議を頻繁に開催しながら、デザイン調整を進めてきた。路面の舗装、街路灯や車止めのデザイン、電話ボックスやバス停上屋のデザイン、改札口上部の屋根のデザイン等、実際の現物や色見本を見ながら詳細なデザイン調整を行った。さらに最終段階では、縮尺1/50の大きな模型を研究室で制作し、関係者および一般の広場利用者が参加する現場原寸のワークショップを行った。駅前広場が日曜日の歩行者天国の時間帯に、現場の改札口付近に大きな完成模型を置き、駅利用者およそ700人に模型を通じて整備内容の説明を学生が行い、質問や意見を収集した。さらに、ロータリーの車線が狭まり、歩道が大きく拡大される状況を理解していただくために、新たに設定される歩車道の境界をカラーテープで路面表示して、改善される歩道空間を体験していただくことにした。また、かつて駅前広場の中央にあったシンボル自由の女神像を新たにできる小広場に移動し,高さも少し低くすることを確認するために、原寸大の女神像の模型を学生が製作して、その移動場所の検討等を行った。特に広場に入って来る5本の道と駅のプラットフォームから女神像が見えなくなるのはよくないという地元意見があったため、移動しても十分見ることが可能というシミュレーションは現場での社会実験なしでは確認できない内容であった。
 今回の交通社会実験は、わずか3時間しかない歩行者天国の間に、準備、実施、片付けを行う必要があったため、約2ヶ月前からコアスタッフ20名が関係機関との調整、模型等の制作等を行った上で、当日は地元の方々と早稲田大学と千葉大学の学生スタッフの協力のもと、実施することができた。
 完成後は、大変明るくなった、歩きやすくなったという評価をいただき、さらに国土交通省の都市景観大賞を受賞することになった。ただ、駅前広場が整備されたために、逆に屋外広告物の派手さが目立つことになり、その整理と秩序が求められている。

 =国土交通省 平成24年度 都市景観大賞受賞=

▶プロジェクトデータ
 ・所在地:東京都目黒区自由が丘1丁目
 ・設計年:2009年
 ・委託者:株式会社ジェイ・スピリット
 ・プロジェクト内容:駅前広場のデザイン調整のサポート